酒造りへのこだわり

米と麹、水だけで醸す全量純米酒蔵

森喜酒造では1998年より醸造用アルコールを一切添加しない、米と麹、水だけで醸す手造りの「純米酒」のみを造っています。
純米酒は真っ正直な酒。酒を造る側の私たちが本当に飲みたいと思う酒を追究していった結果、造る酒全てが「純米酒」になりました。
目指しているのは香りは控えめで、時にひや、時に燗でお料理に寄り添って楽しんで頂ける食中酒。
300石の少量生産だからこそ出来る限り手をかけてお酒を造っています。

蓋麹法による麹造り

すべての麹を伝統的な製法である「蓋麹法」と呼ばれる方法で造っています。
酒造りにおいて、「一麹、二酛(酒母)、三造り(醪)」という言葉があります。麹の品質は酒母の育成、醪の管理、そして最終的にはお酒の品質そのものに大きな影響を及ぼします。つまり、丈夫で良い酒造りを行うためにはしっかりとした品質の麹を造る必要があります。

麹づくりの要点は温度と湿度の管理ともいえます。麹は、麹室(こうじむろ)と呼ばれる30~32℃の高温多湿な部屋のなかで約46時間~56時間かけて造ります。この麹蓋法は『麹蓋』と呼ばれる専用の小箱にお米を小分けにして盛り、約4時間ごとに積み替え(麹蓋の場所を移動させること)を行います。麹室の中央や隅、上段や下段など、その麹蓋の場所によって温度や湿度が異なるため、品温の低い麹蓋を中央に、上段の麹蓋を下段に、下段の麹蓋を上段に入れ替え、これを繰り返すことで全体の均一化を図ります。

この蓋麹法は蓋の容量が小さいために盛や仲仕事、仕舞仕事に多くの労力を必要とし、かつ積み替えの操作など他の製法に比べとても手間がかかります。ですがムラが少なく、すべてのお米に均一に麹菌が繁殖するため、しっかりとした品質の麹を造るためにはこの製法が一番確実であると考えています。

蒸米

森喜酒造ではお米は昔ながらの和釜とバーナーを用いて蒸し上げています。
釜の中に水を張り、その下でバーナーにより加熱し、沸騰させて蒸気を発生させます。そうすることで、釜のお湯がだんだん減って少なくなり、やがて上のほうでは釜肌が露出し、その部分にバーナーの火が当たると乾燥した蒸気が作られます。この蒸気で蒸すと米の表面が乾燥し、さばけのよい外硬内軟の良い蒸米となります。

また、米の張り方には一度に甑内に張り込む方法と、甑に蒸気が上がってきたら米を薄く均一にまき、蒸気が米の層を抜けたら次の米をまく作業を繰り返す「抜掛け法(ぬけがけほう)」と呼ばれる方法があります。森喜酒造では後者の抜掛け法を用いています。
この方法を用いることで、生蒸しやムラ蒸しが避けられ均等に蒸し上げることができるため、より良い蒸米ができるようになります。

酵母無添加の生酛、山廃酛

森喜酒造では2016年より生酛、山廃のお酒は酵母を添加せず、天然の乳酸菌と蔵付き酵母を取り込み、酒母を育てています。

酒母は「乳酸」をいかにして得るかで、2つに大別されます。
その一つは仕込み時に醸造用乳酸を添加して造られる「速醸系酒母」、そして乳酸菌が生成する乳酸を得て造られる「生酛系酒母」です。

生酛系酒母の中には山廃酛、生酛、水酛などがあり、これらは自然の微生物を上手にコントロールして育成する方法です。まず、生酛は古来の製造方法で、伝統的な「山卸し(酛摺り)」という作業を行うものをいいます。
山卸しとは、「半切り」と呼ばれる桶に蒸米、麹、水を投入し、櫂ですり潰す操作のことをいい、これにより蒸米の溶解を促します。
山卸しは10℃以下の気温の低い夜中~早朝にかけて行われ、かつ、この摺りつぶす操作を約2時間ごとに繰り返し行うため、非常に多くの労力を必要とします。
また、山廃酛は「山卸し」を「廃止」したため、「山廃」と呼ばれています。

これらの酒母ができあがるまでに約40日、さらに一ヶ月の醪日数と、
速醸系酒母に比べ育成に倍以上の日数がかかり、かつ非常に労力がかかりますが、他では出せない蔵独自の味、自然発酵ならではの複雑さ、力強く奥行きのある味わいが魅力であると考えています。

(参照) 「増補改訂 最新酒造講本」(財)日本醸造協会

無農薬栽培の米作りについて

『英(はなぶさ)』などの銘柄はお酒造りの原料となる米づくりから手掛けています。
無農薬で育てることによって山田錦本来の味を感じて頂けると思っています。除草剤や殺虫剤を使用しないことで、雑草や虫から山田錦自身が本能的に身を守ろうと生命力の強い実を作ります。

また、肥料には酒粕のみを使用。必要以上に肥料や水を与えないことで、しっかりと根を張る稲に育ちます。収量は少ないものの、山田錦が本来持っているポテンシャルを発揮することができ、極端に長竿でもなく、低たんぱくで高精白にも耐えうる身の締まった山田錦が得られます。